2017年08月03日

贋具の塔<1.幕開の齟齬>



男:失礼する。ちょっといいかな。





セルグ:……誰だ、あんた。

男:ゼノックスさんの家はここでよろしいのかな。

セルグ:へ、ゼノックス? 確かに此処にいるが……あいつの客か?

男:ああ。

セルグ:来客なんて随分珍しいな……一応聞くが何の用だ?

男:そうだ。彼に仕事を頼んでいるんだ。

セルグ:……仕事、なぁ……あいつなら下にいるから勝手に降りてくれ。

男:そうか、ありがとう。





セルグ:(あいつがこんな真昼間に……しかも依頼人と会う仕事、なぁ……?)













ゼノックス:ん、何か?

男:君がゼノックスかい?

ゼノックス:そうだけど、誰。

男:誰って、君が受けた仕事の依頼主だよ。君がなかなか連絡をくれないから、こうして家にきてみたのだけれど。

ゼノックス:……へ?

男:へ? って……しっかりしてほしいな。君が私の依頼を受けてくれたんだろう?






ゼノックス:待て。何のことだ。

男:私の依頼だよ。人物調査の。

ゼノックス:は?

男:早速だけれど頼むよ。対象についてなんだが……。

ゼノックス:話を聞け。待てと言っている。

男:なんだい? 質問なら後にして欲しいのだけど。





ゼノックス:おれは基本的に依頼人とコンタクトを取らないといけない種類の仕事はしない。てか、人物調査とか知らん。何かの間違いじゃないのか。

男:そんなことを言われても。

ゼノックス:おれも困る。

男:ふむ。もし人違いだったとしよう。ならばこの場で請けてもらいたい。

ゼノックス:は? 断る。

男:仕方がないからやります、くらい言えないのか?

ゼノックス:ない。そういう規約もない。言うとすれば「他所を当たれ」。

男:少しくらい聞く耳を持ってくれてもいいんじゃないか。

ゼノックス:断る。おれ関係ないし。





男:……。まったく人物調査の1つもできないとは、ソードマンギルドのメンバーというのは脳味噌まで筋肉な輩しかいないのか。まあ、あのマスターでは仕方がないか……。

ゼノックス:……。

男:別にそんな難しいことではないのだよ。君が大人しく引き受けてくれれば話が早いのに。

ゼノックス:断る。他所を当たれと言った。大体誰だお前。何処から来た。ソードマンギルドと言ったな。誰の紹介だ。誰からおれのことを聞いた。

男:それを話したら仕事を請けてくれるのか?

ゼノックス:くそ、なんなんだこいつ。……はあ。あまり他人に頼りたくはないんだが、仕方ないな。











ゼノックス:ちょっといいか。

セルグ:ん、どうしかしたのか? 客は帰ってねえようだが……。

ゼノックス:うん。腹立つ。今おれこのままだと相手を殺しかねんくらい苛立ってる。





セルグ:随分と物騒だなオイ……家の中で殺傷沙汰は勘弁してくれ。

ゼノックス:それを避けるためにも頼むわ。いろいろめんどくさいことになってる気がする。すまん、代わってくれ。

セルグ:……いや、何を代われと?

ゼノックス:ああ。アレの相手。なかなかしつこくて帰ってくれそうにない。なんとかしてくれ。

セルグ:……まあ、同席くらいなら別にいいが。代わりはしねえからな。

ゼノックス:じゃあそれでいいや。よろしく。

セルグ:へいへい。無駄な気がするが厄介ごとで無い事を祈っとくか……。

posted by 黒鳥なしら at 00:00| Comment(0) | 企画/連動 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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