
ウラル:……セルグの知り合いが、借家を探しているらしい。

ウラル:それで、私に家の借り方を聞いてきたんだが、知らないんだ。
ウラル:自分自身、未だになんでこんな立派な家に住めてるのかわかってないし……。
ウラル:この家って、今でこそ私名義になってるけれど、元々は父さん名義で借りてくれてたんだろう? 教えて欲しいんだ。
エルシオ:なるほど、そんなことが。ええと、どうでしたっけねえ……。少なくとも10年以上は前になりますよねえ……。

エルシオ:うーん……確かここは管轄がギルド評議会のものですね。
エルシオ:元々は自分の庭を持ってない私に、白の聖堂が貴方の保護と養育を担当させるにあたって用意・手続きしたものです。
エルシオ:そして私がここを離れることになった際に、名義を貴方に変更したのですよ。

ウラル:そうだったのか……。それでは普通の家無しでは借りられないんだな。
エルシオ:そうなりますねえ。管轄がギルド評議会のものはまず評議会に申請を行い、それから白の聖堂だの黒の聖堂だの各種所属ギルド付けで借りられるみたいですね。
エルシオ:他にも騎士団や東西南北の各都市ものもあるようですが、恐らく騎士団所属や各都市出身の者しか利用できないと思いますよ。
エルシオ:基本的には援助してくれる身内・親類がいなかったり、まったく資産を持っていない、病気や怪我で働けず収入も無い者など、弱者ための救済措置です。
エルシオ:なので、健常者からの申請は通常は通りにくいですよ。
ウラル:なるほど。ただ家が無いだけでは難しいんだな。
エルシオ:はい。ですが……例外的に、やむを得ず必要であるとあちら側が判断した場合。それと、既に住んでいる人物からの推薦と保証人がいる場合は通りやすい、といった抜け道も存在するようですよ。

エルシオ:貴方の場合は前者ですね。行き場の無い黒き

ウラル:……ああ。経緯はどうあれ、貴方には感謝しかないよ。本当に……ありがとう。
エルシオ:ふふ、こちらこそありがとうございます。

ウラル:……しかしそういうことならば、何か現状が分かるものが必要なのか?
エルシオ:うーん、その辺の書類は住みたい本人が準備するものですね。ウラル君はどちらかというと推薦と保証人的な感じでしょうか。
ウラル:ふむ。……と、いうか。ここまで話をしていてなんだが、私は何故あの人が家を借りたがってるか知らないんだよな。
エルシオ:え、そうなのですか? てっきり、その方から相談でも受けたのかと。
ウラル:いや……先日セルグに会ったんだが、見慣れん人物を連れててな。その人が家を探してるから借り方を教えてくれって。
エルシオ:なるほど、セルグが頼んだんですね。見慣れない方……誰でしょう。どんな感じの方でした?

ウラル:……ええと。黒髪黒目の
エルシオ:んー……あんまり思い当たりません。私の知らない知人でしょうかねえ。
ウラル:……そうか。そうなのかもな。

ウラル:……会った瞬間、嫌な感じがしたんだ。あの施設のにおいというかなんとかいうか。でも、どう見ても黒髪黒目の人間だったし、私のことを気遣うようなことも言ってくれた。連中の関係者とは思えないが……よくわからないんだ。
エルシオ:嫌な感じがしたのによく分からない、ですか。よく分からないなら、関わってみるのも手かもしれませんねえ。
ウラル:そ、そうか……。父さんがそう、言うなら……。

エルシオ:……私の言葉は提案ですから、貴方が嫌なことはやらなくても良いのですよ?
ウラル:……うん。本当に嫌なら、やらないから。
エルシオ:それなら何よりです。ふふ、また何か困ったら相談してくださいね。
ウラル:……うん。ありがとう。
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エルシオ:……(結局ここに住むことになったと聞きましたが、ウラル君大丈夫でしょうか)

アルス:あ、エルシオさんだー、こんにちはですっ!
ウラル:……え? あ……どうも。
ダルセージ:誰ー? お客さんー?
ダルセージ:……あれ。

ダルセージ:あの、変なこと聞きますけど……もしかして前に会ったことあったりしませんか?
エルシオ:え、えーと……失礼ですが、どちら様でしょうか……?
ダルセージ:あー、んー……ちょっと前に豆の木で人を助けて、そいつに服貸したりしませんでした?
ダルセージ:俺、あのとき色々教えてもらったり、服貸してもらった人なんですけど……。
エルシオ:……ああー。あのときの……。

エルシオ:(魔物さん?)
ダルセージ:(はい。)

エルシオ:なるほど。元気にやってらしたのですね。
ダルセージ:はい、おかげさまで。あの時はお世話になりました。
ダルセージ:ですが、あの、その……。いつかお会いしたときのために、借りた服、綺麗に洗濯してたんだけど……実は俺の家全焼して、それで服も全部燃えてしまって……。
ダルセージ:本当にすみませんっっっ。
エルシオ:え、いえそんな、いいですよ。余り物でしたし……言われるまで忘れてましたし(ぼそ)
ダルセージ:……それならいいんだけど……。

ウラル:……面識があったのか?
ダルセージ:ああ、えっとねー。前に俺が行き倒れてたときに声をかけてくれたんだよ。
エルシオ:弟と待ち合わせてた途中、たまたま通りかかったのですよ。
ダルセージ:でも、よくあんな行き倒れてる不審者に声かけてくれたよねー。
エルシオ:いえまあ、なんだか放っておけなかったので……。
ウラル:……。……やはり優しいんだな、貴方は。

エルシオ:(上から落ちてきた魔物さんでしたね。人型変化を教えてあげたんでしたっけ……)
エルシオ:(大丈夫ですよ、ウラル君。この方は恐らく、貴方と同じ……)